ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2019年05月01日

消費税の仕組みと増税に伴う対処についてご教授ください。

当院は、昨年開業した眼科のクリニックです。メインの駅に近いことや競合クリニックが少ないことで患者数は増加しています。今年10月から消費税が8%から10%に上がるということになっていますが、院長として初めての経験なので消費税の仕組み、診療報酬の臨時改定、対処の仕方につきましてご指導いただければと思います。来年4月までに、設備拡張工事や医療機器の購入、コンタクトレンズ外来のスタートを予定しています。(診療所院長42歳)

10月1日からの消費税率10%への引き上げに伴う対処方法については 患者への対応だけではなく、職員や協力事業者それぞれへの対応も重要

ご質問の趣旨である3点を中心にお答えします。

1.消費税の仕組み 

医療機関が提供するサービス(売上)のうち、消費税の課税対象・対象外(非課税となる項目)は何であるのか、簡単に整理します。

○非課税…保険診療にかかる収入(診療報酬・介護報酬)
○課税…自由診療、健康診断、文書料をはじめとした「療養の給付に直接関連しないサービス」

医療機関の場合、保険診療による収入=非課税対象の収入が大半を占めることとなります。一方で、自由診療(保険証の未提示に伴う自由診療も含む)や健康診断等の収入は課税対象となる点に留意しなければなりません。

次に、仕入れについても課税対象・非課税対象について簡単に整理します。国税庁が公表している資料には、

○非課税・不課税…土地の購入や賃借、株式や債権の購入、利子や保険料の支払などの非課税取引、
給与の支払、税金の納付などの不課税取引、
○課税…商品の仕入れや、機械等の事業用資産の購入・賃借、事務用品の購入、賃加工や運送等のサービス提供を受けること、

と示されています。ここで留意しなければならないのは、「商品の仕入れ」です。院内で使用する薬剤や材料の購入は課税仕入れになるのです。薬価や特定保険医療材料価格には消費税に相当する額が含まれていますので、(前述した通り保険診療に係る収入は非課税ですから)医療機器や受付廻りの什器の購入等に伴う消費税は診療報酬から賄うこととなります。

2.診療報酬の改定

10月1日付で消費税率が改定されることに伴い、診療報酬本体・薬価・特定保険医療材料価格もあわせて改定されます。改定率は昨年12月17日に発表されました。具体的には、以下の通りです。

○診療報酬改定 +0.41%
医科 +0.48%、歯科 +0.57%、調剤 +0.12%
○薬価等
ⅰ 薬価 ▲0.51% うち、消費税対応分 +0.42%、実勢価改定等 ▲0.93%
ⅱ 材料価格 +0.03% うち、消費税対応分 +0.06%、実勢価改定 ▲0.02%

この数値を踏まえ2月13日には診療報酬本体の改定点数案が公表されました。医科の各点数の具体案の例は下記の通りです。消費税率に相当する費用は、基本診療料(初・再診料と入院基本料)および特掲診療料(在宅患者訪問診療料等)で賄います。

○初診料
・初診料(現行)282点→(改定後)288点、うち消費税対応18点
・同一日二科目の初診料(現行)141点→(改定後)144点、うち消費税対応9点

○再診料
・再診料および同日再診料(現行)72点→(改定後)73点、うち消費税対応4点
・同一日二科目の再診料(現行)36点→(改定後)37点、うち消費税対応3点
・オンライン診療料(現行)70点→(改定後)71点、うち消費税対応4点

○地域包括診療料1(現行)1560点→(改定後)1660点、うち消費税対応103点

○在宅患者訪問診療料(Ⅰ)在宅患者訪問診療料1
・同一建物居住者以外の場合(現行)833点→(改定後)888点、うち消費税対応58点
・同一建物居住者の場合(現行)203点→(改定後)213点、うち消費税対応13点

今回の改定では、消費税対応分に相当する点数の数値も示されていますが、この点について中医協は、「前回の引き上げの際、病院を中心に大幅な補填不足が生じたことを踏まえ、今回の改定ではこの時の3%分も含むとともに、消費税率5%から10%の部分について、医療機関の補填のバラツキが是正されるような診療報酬本体への配点を行う」としています。

3.対応に向けて(例)

消費税率改定に伴う対応は、診療面(対患者)と運営面(対職員・協力事業者)の両方で実践することが要諦です。

ⅰ診療面(対患者)
消費税率改定に伴い、診療報酬および文書料等が増加することを院内掲示であらかじめ告知することが必要です。特に、文書料をはじめとした「療養の給付と直接関係しないサービス等の費用」は、療養担当規則の規定に則り、10月からは新しい金額での表示に差し替えなければなりません。

ⅱ運営面(対職員・協力事業者)
対職員については、特に通勤手当の支給をどうするかが課題です。消費税課税率は売上時点の数値で決まりますので、(よくある事例ですが)9月中に電車・バス等の定期を更新してもらうことにより、通勤費用(手当)にかかる消費税負担を抑制することができます。協力事業者に対しても、消費税率改定に伴う見積もり合わせが必要です。この際、協力事業者に過度の負担を強いることがないよう留意してください。また、協力事業者との契約書において、10月以後の消費税負担に関して記載されていない場合、どのようにするかあらかじめ検討・協議することも必要です。さらに、消耗品類についても、過度の在庫負担にならない程度で9月中に調整を図る(具体的には在庫量を増やす)ことが、代表的な対応例です。具体的な取り組みは、院内事情に精通されている貴院の顧問会計士・税理士と協議したうえで実践してください。