ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2015年09月01日

医療に関するマイナンバー制度への対応について

いよいよマイナンバー制度が導入されます。10月には個人番号が通知されます。当医院では従業員に対して社会保険業務、税務業務を行うために従事者からそれぞれの個人番号を取得します。当然、患者さんについても個人番号(マイナンバー)によりカルテ管理等を行うことになると思います。医療人として従来から「守秘義務」の重大さは理解して実践していますが、マイナンバー制度導入により変わった点があるでしょうか。今後、医療に関しての対応についてご教示下さい。(整形外科開業医52歳)

「組織運営面」では取扱責任者や明確な院内規定、物理的な安全管理が不可欠に 「診療面」ではマイナンバーの管理、データの標準化に向けたシステム整備を

マイナンバー制度は、組織・職員の社会保障や税務関係面にわたる組織運営と診療実務面で運用開始時期がずれる点に注意が必要です。とはいえ、各方面の運用で共通しているのは、従来の個人情報保護法に基づく運用をさらに進化させなければならない点ですから、職務規定や作業手順書等はそれに見合った形に修正しなければなりません。特に、法律に違反した場合の罰則規定が強化されていますので、職務規定等もそれに応じて修正していくことが必要不可欠になります。

1.組織運営面での注意点
利用目的について明確にしなければなりません。たとえば、職員を新規に採用する際の諸手続きにおいて、職員のマイナンバー情報の提供を受けなければその後の税務処理等に影響しますので、諸手続きの際にどのような目的でマイナンバーを利用するのかを明記して承諾を得る形の文書が必要となります。本人確認に当たっては、職員が個人番号カードをもっている場合とそうでない場合に分かれます。後者の場合、何を利用するのか(運転免許証や住民票等)を院内規定で明文化することが不可欠です。

法令では、「マイナンバーが記載された書類の保管は必要がある場合のみ」とされていますので、所管法令によって一定期間保存が義務づけられている場合などはその期間に応じて保管できます。一方で、不必要になった際は速やかに処分しなければなりません。マイナンバーの取り扱いには、個人情報保護法よりも厳格な保護措置が求められます。取扱責任者・担当者や定期的な職員研修について明確な院内規定を設けることが不可欠です。

また、物理的・技術的安全管理措置も講じなければなりません。シュレッダーの設置等は個人情報保護法に則り実施されていると思いますが、マイナンバーを扱うコンピュータには責任者や取扱者だけがアクセスできるパスワード等を設定することやLAN回線を接続しない(スタンドアローン式とする)などの工夫が必要です。

2.診療実務面での注意点
医療の実務面での利用は、個人番号カードに健康保険証の機能をもたせることからスタートします。開始時期は、平成29年の7月以降の「できるだけ早期に」とされています。その後は、医療情報連携ネットワークヘの利用(平成28年度まで)や電子カルテデータの標準化の環境整備(平成32年度まで)などへ順次拡大予定とされています。このように、保険証の確認からその後の診療データの利活用までの広範囲にわたり用いることとなります。診療実務面では患者さんのマイナンバーを扱いますので、職員のマイナンバーよりも一層細心の注意を払った体制や運営が望まれます。

マイナンバーの利用によって、従来の保険証確認業務は大きく様変わりすることが予想されます。また、保険証機能だけでなく、さまざまな用途にも使われるため、取り扱い手順の見直しや文書による明文化とそれに則った作業が不可欠になります。業務ローテーション等を明確にすることで、「いつ・誰が」マイナンバーを利用して保険資格をオンラインでチェックしたかがわかる仕組みも必要です。機器の運用面に関しては、保険証資格をオンラインチェックできる端末を制限することが大切です。また、これらの端末はインターネットにアクセスできなくするなどの仕組みを設定することが必要です。

ここでポイントになるのは「医事課にあるコンピュータは、院内だけで使用するコンピュータではなく外部につながるシステムである」という点をスタッフに徹底して認知させることです。そのためには、システムを操作する際、必ずIDとパスワードを入力する手順やシステムの仕組みを構築していくことが大切です。

マイナンバー制度を利用して電子カルテデータの標準化に向けた環境整備が国内全体の課題として提起されています。ここで着目したいのはカルテ記載の運用面です。全国の医療機関相互で情報を電子的に共有するためには、医師によって異なるカルテの書き方を標準化することが不可欠です。全体的な仕組みやフォーマットは厚生労働省を中心に検討された後にアナウンスされると考えられます。