ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2015年03月01日

非営利ホールディングカンパニー型法人について

無床の内科クリニックですが、最近医療法人制度の見直しが行われ、ホールディングカンパニー型が検討されていると聞きます。今後その要件等が具体化されると思われますが、持分のない医療法人への移行については、医療機関としてのメリットは果たしてあるのでしょうか。以前の、持分のある医療法人の場合の法人化のメリットとして分院の展開や訪問看護ステーションの開設、税金対策などがあったように思いますが、今後の医療法人制度の方向性と照らして地域の診療所にとっての有利性や考え方などがありましたらお教え下さい。(医療法人理事長55歳)

地域医療連携の推進のための非営利新型法人だが運営をめぐる病院と診療所との利害調整に課題が

非営利ホールディングカンパニー型法人として検討が行われてきた「地域医療連携推進法人(仮称)」については、検討を行ってきた「医療法人の事業展開に関する検討会」が、2月9日、「報告書」を取りまとめ、厚生労働省は「報告書」の内容を反映させた「医療法の一部を改正する法律案」の3月下旬までの国会提出を目指すとしています。

さて、「報告書」の内容ですが、①非営利新型法人(地域医療連携推進法人(仮称))の創設、②経営の透明性の確保およびガバナンス強化など医療法人制度の見直し、③社会医療法人と特定医療法人以外の持分なし医療法人の分割を可能にし、社会医療法人の認定要件の見直し――の3点で構成されています。そして、非営利新型法人に関しては、①都道府県知事が認定する一般社団法人、②理事長は都道府県知事が認可する、③事業を展開する範囲は地域医療構想区域を基本に知事が認定する、④参加法人は事業展開範囲で医療機関を開設している非営利法人とする――となっており、主な業務内容としては⑤医療機能の分化の方針、各医療機関の連携の方針などについて統一的な「連携推進方針(仮称)」を決定、⑥病床再編(病床数の融通)、キャリアパスの構築、医師・看護師などの共同研修、医療機器などの共同利用、病院の開設、資金の貸付、⑦医薬品の共同購入などの関連事業を行う株式会社の保有――などが示されています。

このような内容をみると、「都道府県知事の認定・認可」に示されるように非営利新型法人には公共的な性格が非常に色濃く感じられます。たとえば、非営利新型法人は長らく非営利ホールディングカンパニー型法人制度という仮称で論議されてきたことから理解できるように、その下に多くの医療法人がぶら下がる社団型の制度として構想されているわけですが、ぶら下がる医療法人としては大規模な病院から中小規模の病院、有床無床の診療所までの医療法人が想定されています。したがって、日常的な業務は理事会によって執行されますが、法人としての重要な事項は社員総会で決定されることになります。そして、非営利新型法人に参加する医療法人は社員として各1票の議決権を保有するのが原則となっています。ただし、「報告書」では1法人1議決権以外の取り扱いを定めることも可能としています。何故かというと、大規模病院も無床診療所も同じ1票の議決権しか保有できないとなると、大規模病院が不利益を感じて非営利新型法人への参加を躊躇することが予見されるからです。それを防ぐために予防線を張ったわけですが、実はここに非営利新型法人の制度の難しさが示されています。

つまり、地域医療構想を達成するための選択肢の一つ、地域医療連携を推進するための方法の一つとして非営利新型法人の制度は構想されているわけですが、その目的を実現するためには地域のより多くの医療機関が参加することが重要です。また、病床などの規模の違いや医療機能の違いにかかわらず多種多様な医療機関の参加が求められるわけですが、当然、医療機関の規模や機能の違いは診療報酬などを通じて利害の違いをもたらすことになり、それぞれの利害に応じて勢力が形成されることになります。昔ながらの地域医療のあり方でいえば、「公立公的病院(大病院)VS民間病院(中小病院)」と「民間病院(中小病院)VS診療所」という二つの対立の構図ということになり、さらに過去の経験によるならば、この構図は基本的に「公立公的病院(大病院)+診療所VS民間病院(中小病院)」という勢力図に収れんされることになります。例外的に、地域医療の中核を担っているのが民間大病院という医療圏では「公立公的病院(大病院)VS民間病院(中小病院)」という構図は存在せず、単純に「民間病院(中小病院)VS診療所」という関係になります。

そうすると、地域から多くの診療所が非営利新型法人に参加すると診療所側が圧倒的な議決権を有することになり、その運営はあたかも郡市区医師会のような様相を呈することになりかねません。あるいは、病院側として、それでは困るということで「ただし」のケースを採用して、病院には医療機能や病床規模を基準として議決権を与えるとすると診療所側、中小の民間病院サイドから不平不満が出ることになります。この辺りの調整をいかに図るのか。失敗すると、地域医療連携それ自体にも悪影響が出ることは間違いないだけに心配されます。