ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2015年01月01日

女性医師の就労実態の医療提供への影響(下)

厚生労働省の調査によると、医師全体に占める女性医師の比率が一九・六%と過去最高になり、これは五人に一人が女医ということになります。しかしその一方で、女性医師が増え過ぎたことによる弊害もささやかれています。私たち女性医師には出産と子育てという時期が来ます。しかし、私の勤務する病院では産休中の女性医師の穴埋めで、ただでさえ医師不足の現場が大混乱しているというのが現実です。安倍内閣は、女性の活躍を成長戦略の中核と位置づけていますが、単純に喜んでばかりもいられず、結婚して働き続けたくとも病院サイドの支援体制はまだまだ期待できそうにありません。おそらく日本の労働者は男女を問わず、仕事と家庭の両立に大きな問題を抱えているのでしょう。女性医師の就労状況の実態と結婚しても医師資格を生かせるライフプランについてアドバイスをお願いします。(地方都市病院勤務女性医師)(前号の続き)

女性医師の勤務環境改善に取り組む行政や医師会、臨床以外でも医師資格を生かせる道もある

(2)女性医師ならではの苦労
二〇〇九年三月の日本医師会男女共同参画委員会による「女性医師の勤務環境の現況に関する調査」によると、女性医師の四五・四%は一週間に五一時間以上の実勤務を行い、八四・九%が宿直翌日に通常勤務についています。女性医師に対する配慮があまりないのが現状の医師の世界です。女性医師の場合、医学部卒業後五年目から一〇年以内に職場を離れる傾向にあり、その理由となるのが妊娠・出産・育児です。大学において六年間の医学教育、その後の研修医期間を修了し、これからようやく戦力となりつつある時期に女性医師が職を離れていくことは大きな損失です。しかしながら、精神的にも肉体的にも厳しい医師の仕事は子育てと両立できるほど容易な職業ではないために、職を離れる女性医師が少なくないのが現状です。
その要因を日本医師会の調査から推察すると、産前・産後休暇中に身分保障があったのは約六割で、休暇中に給与が支給されていたのは五一・九%と約半数であること。また、育児休業の取得率は約四割に止どまっており、育児休業中に身分保障があったのは約四割で、休業中に給与が支給されていたのは二割強にすぎないことなど、産前・産後休暇中の身分保障・給与支給等の支援制度の整備が十分とはいえず、育児休業に関してはさらに不十分であることの影響が考えられます。
休暇・休業中の身分保障を充実させ、仮に制度を整備したとしても実際に活用できる実効性のあるものにしない限り、女性医師が就業を中断せざるを得ない状況は変わらないでしょう。

3.女性医師が医師資格を活かせるライフプラン
(1)臨床医を続けるならば働きやすい病院を選ぶ
病院によっては、医師を確保する目的もあって、出産や育児といったライフステージに応じた就労を支援するための取組を強化しているところが増えているようですが、実態は外部からはわかりません。あくまで参考情報としてですが、「働きやすい病院評価の認証」(http://www.hospirate.jp)という特定非営利活動法人が行っている取り組みがあります。
病院からの依頼を受けて現地訪問により確認のうえ、現実に「働きやすい病院づくり」が進められていると評価される病院・医療機関に、NPO法人イージェイネットが「働きやすい病院」認証を付与するとともに、広く「働きやすい病院」として広報しています。まだ全国に二二病院しか認証病院はありませんが、就職先・転職先として考える場合には参考にできるかもしれません。

(2)病院の臨床医以外の職に就く
医師の働き方は、病院の臨床医以外にもたくさんあります。たとえば、行政機関の従事者や産業医、それ以外の保健衛生業務、たとえば社会保険診療報酬支払基金、日本赤十字社の血液センター、生命保険会社(嘱託医)等があります。また介護系の施設では、老人保健施設の施設長は医師である必要があります。
行政機関の従事者、たとえば厚生労働省や都道府県の医系技官は、給与水準は一般的には低くなってしまいますが、医療行政に携わるという点で臨床医とはまた別のやりがいがあります。
また、一般企業等の事業所の場合は、給与水準は一般の社員と比較しておそらく高めの設定にされており、労働基準関係法令は守られているうえに、福利厚生制度も病院などと比較して整っています。ワーク・ライフ・バランスを重視する場合、有力な選択肢の一つとして考えられます。

(3)理解のあるパートナーを選ぶ
女性医師の悩みとして、「家事と仕事の両立」「プライベートな時間や勉強時間の不足」などが多くあげられています。残念ながら、病院の勤務医の場合は、病院サイドの支援体制はまだまだ期待できないのが現実であるため、せめてパートナーの協力、理解がほしいところです。
統計データはありませんが、女性医師の結婚相手は男性医師が多いようです。医師同士であれば、将来は一緒に開業するなど、仕事のうえで信頼できるパートナーにもなります。医師として一生働くとした場合に、自らが描く将来設計に夫をどのように嵌め込むかを戦略的に考えることも必要かもしれません。

4.女性医師の勤労環境改善への期待
医師の世界は閉鎖的で男性主導、また、これまでみてきたように労働基準関係法令が必ずしも順守されていない特殊な世界です。そのような状況下で女性医師が働くのは大変なことです。
ただ、国はいわゆる医療崩壊以後に医師確保対策に力を入れており、数の上でも重要性が高まっている女性医師を対象に、「女性医師等就労支援事業」、「女性医師支援センター事業」および「病院内保育所事業」の三事業を実施し、女性医師の離職防止・復職支援を行っています。
また、日本医師会においても、女性医師支援センターなどの取り組みが進められています。
表現は適切ではないかもしれませんが、医師は国民皆保険を支える社会資源として非常に貴重な存在です。現状の女性医師の勤労環境は他の職業と比べてかなり劣後していますが、国も女性医師がライフステージに応じて活躍できる環境整備のあり方について検討する「女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会」を設置するなど、国をあげて改善の方向に向かっており、徐々によくなっています。
そのような状況をふまえ、医療の専門家として医師資格を活かし社会貢献ができる仕事を続けてくださることを是非お願いしたいと思います。(了)