ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2014年12月01日

女性医師の就労実態の医療提供への影響(上)

厚生労働省の調査によると、医師全体に占める女性医師の比率が一九・六%と過去最高になり、これは五人に一人が女医ということになります。しかしその一方で、女性医師が増え過ぎたことによる弊害もささやかれています。私たち女性医師には出産と子育てという時期が来ます。しかし、私の勤務する病院では産休中の女性医師の穴埋めで、ただでさえ医師不足の現場が大混乱しているというのが現実です。安倍内閣は、女性の活躍を成長戦略の中核と位置づけていますが、単純に喜んでばかりもいられず、結婚して働き続けたくとも病院サイドの支援体制はまだまだ期待できそうにありません。おそらく日本の労働者は男女を問わず、仕事と家庭の両立に大きな問題を抱えているのでしょう。女性医師の就労状況の実態と結婚しても医師資格を生かせるライフプランについてアドバイスをお願いします。(地方都市病院勤務女性医師)

医師不足、過酷な勤務医の就労状況のなかでの女性医師の増加と、女性医師に対する就労支援体制の未整備

1.女性医師の増加と影響度の増大
最近テレビをつけると、健康や病気に関する番組やはたまたバラエティ番組にまで、女性医師が出演し活躍しているのを目にする機会が多くなりましたが、女性医師数は増加の一途を辿っており、二〇一二年には約五万六〇〇〇人超になりました。一九七〇年代は女性医師が全体の医師数に占める割合は一〇%弱にすぎませんでしたが、二〇一二年においては一九・六%まで増えております。特に最近では、医師国家試験合格者に占める女性の割合は三〇%を超えています。
女性医師は二〇代、三〇代の比較的若い医師層で全体の半数以上を占めており、今後も女性医師の割合は伸張傾向にあるといわれています。
また、以前は女性医師といえば眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科・精神科などで救急救命対応がほとんどなく、勤務条件が相対的に厳しくない診療科に勤務するのが主流でした。しかし最近では、外科・小児科・産婦人科など、医師不足が問題になっている診療科で、オンコール、当直、救急救命にも対応し活躍する女性医師が増えてきています。特に、産婦人科・小児科については二〇代の女性医師の割合が半数を上回っているために影響度は大きく、出産や育児などのライフステージに応じた就労を支援するための取り組みが課題となっています。
女性医師が活躍し続けられる環境、個人として人並みに幸せを感じられる、医療の専門家として社会貢献できる、ある意味当たり前の環境をいかに整備するかが社会としての課題といえます。

2.3Kとまでいわれている厳しい勤務状況
今から六~七年前に医療崩壊という言葉がマスメディアでよく使用されていましたが、最近はあまり耳にしなくなってきました。政府は、診療報酬改定などによって、医師の勤務環境が特に問題となっていた救急や産科、小児科、外科などに重点的に点数を付けたり、医師に作業補助者を付けるようなインセンティブを作ったりするなど、さまざまな対策を講じてきました。その成果が徐々に出てきているのかもしれません。
しかし、二〇一一年一二月実施の独立行政法人労働政策研究・研修機構による「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によりますと、医療現場における医師の勤務状況の劣悪さは、未だ解消されていないようです。
(1)勤務医の厳しい就労状況
①週当たり全労働時間は四割が「六〇時間以上」、約半数が年休取得日数「三日以下」
一週間当たりの全労働時間の平均は五三・二時間で、「六〇時間以上」(「六〇~七〇時間未満」「七〇~八〇時間未満」「八〇時間以上」の合計)の割合は四〇・〇%となっています。大企業においては週休二日が普及していますが、医師の労働時間を仮に週五日で単純計算しますと、一日当たり一二時間以上(六〇時間÷五日)が四〇・〇%を占めている状況ですので、いかに異常かがわかると思います。
②宿直がある者の平均睡眠時間は四時間未満が半数弱。翌日は通常勤務が八六・二%
主たる勤務先で一カ月間に「日直あり」(日直一回以上の合計)は六一・八%、「宿直あり」(宿直一回以上の合計)は六七・四%。宿直一回当たりの平均睡眠(仮眠)時間は「四時間以上」が五二・七%ともっとも割合が高いものの、次いで「三~四時間未満」(二七・七%)、「二~三時間未満」(一〇・四%)、「二時間未満」(五・八%)となっており、「ほとんど睡眠できない」の三・五%を合わせますと、半数弱が平均睡眠時間が四時間未満です。そのうえ、宿直翌日の勤務体制は、「通常どおり勤務する」が八六・二%となっています。医師自身の健康にかかわる問題であり、患者にとっても医療安全にかかわる問題でもありますので、この状況を放置しておくのは非常に危険だと思われます。
③将来の働き方について
「今の職場(同じ病院・同じ診療科)で働きたい」が四八・六%ともっとも割合が高く、次いで、「別の病院(診療科は同じ)に異動したい」(二六・三%)、「開業したい」(八・九%)、「医師として非常勤として勤務したい」(七・八%)などとなっています。
若い年齢層や女性の医師は、今の職場に対する不満が相対的に大きく、できることならば現状を変えたいと考えている割合が高いようです。
最近では、「医師といえども勤務医は病院に雇用されている労働者であり、労働基準関係法令の保護下にあるべき」とする法適用に積極的な回答の割合が六九・九%と増えています。男女別でみると女性は七七・七%と割合が高く、年齢別にみるとおおむね年齢が若くなるほど「法適用に積極的な回答」の割合が高くなっています。
勤務する側の意識がやっと芽生えてきたような状況であり、現状では医師という職業、特に大部分を占める勤務医の就労実態は男女問わず非常に厳しいことがわかりました。
以前は、医師の職業倫理、ノブレス・オブリージュに支えられてきた部分がありましたが、時代も変化し、3K(きつい、汚い、危険)の分野は敬遠され、3ない(救急がない、当直がない、癌がない)の分野が好まれるような時代です。医師を雇用する医療機関には、医師の意識変化にあわせた対応が求められます(以下次号)。