ドクターQ&A

Q&A 当会では医療経営に関するドクターの疑問にお答えしています。
こちらではその一部をご紹介しています。
回答日 2014年10月01日

「地域包括ケア」における医療の役割について

「地域包括ケア」という言葉が盛んに使われるようになりましたが、なかなか実態がみえてきません。一方、厚生労働省は、今後の診療報酬改定で高齢者の在宅への復帰を鮮明にしました。将来的に病院のベッドが飽和状態になり、病院が本来担う急性期医療に大きな支障が生じるという危機感のようです。
しかし、急性期の患者が病院から出ていく際には連携が必要と思いますが、医療と福祉が連携を行う場合、それができる医療従事者が現場に少ないのが実情で、とても気になります。地域包括ケアにおける医療の役割や、日本医師会の取り組みに対する考え方についてご説明願います。(中小病院事務長)

治すだけではなく、高齢者の生活を支える医療の提供と介護士など多様な専門職との連携によるスムーズなサービスの提供

◆地域包括ケアシステムにおける医療の役割

(1)在宅医療の重要性
今年四月の診療報酬改定において、一般病棟の七対一入院基本料や新たにできた地域包括ケア病棟、療養病棟入院基本料1(在宅復帰機能強化加算)において、在宅復帰率の施設基準ができ、在宅医療の重要性はますます高まっています。
地域包括ケアシステムにおける医療の役割は、治す医療だけではなく、生活を支える医療を重視する必要があります。治癒不可能な病態をもった患者の終末期までを、生活の質を確保しながら医療的に対応することで患者の満足度を高めることです。QOL(Quality of Life)だけではなくQOD(Quality of Death)も意識したケアを行う必要があります。

 

(2)医療と介護の連携
医療および看護と介護の連携については、現場で使われている言葉が違ったり、医師、看護はどうしても介護士に対して横の関係ではなく、上下の関係でみたりする場合がまだまだ多いため、スムーズに連携が進んでいなかったと考えられます。
そのような状況を改善していくために、厚生労働省は平成二三年度より在宅医療連携拠点事業を開始し、医療と介護などの関係をコーディネイトできる人材を育成しています。

(3)日本医師会の取り組み姿勢
日本医師会は、今年度「地域包括ケア推進室」を設置し、地域包括ケアに積極的に関与する姿勢を示しています。
具体的には、第一に「介護予防」で、骨折などのトラブルがあった場合でも、残された機能をできるだけ維持したまま社会生活を送れるような支援をすることです。適切な医療保険、介護保険を使ったリハビリを提供するといった臨床での貢献もありますが、郡市医師会においては高齢者が要介護状態になることを予防するために、市町村の実施する地域支援事業に積極的にかかわることで地域に元気な高齢者を増やすことに貢献することを目指しています。
第二は「生活の支えと命の保証」で、地域にあっての尊厳のある生と死が叶うように、在宅医療でサポートすること、郡市医師会が先頭に立ち、行政や多職種と連携して街づくりを進めることを目指しています。
また、「かかりつけ医に求められるもの」として、住まい・医療・介護・福祉・生活サービスを融合するために地域でその先頭に立つ、あるいは後方からそのサポートをすることがあげられます。これまでの医療の提供体制においては、専門性ばかりが重視され、地域包括ケアに不可欠な地域を診るという視点が軽視されてきた側面がありましたが、かかりつけ医には疾病対応だけではなくあらゆる相談事にも親身になって応じることが求められること、さらに緊急時に入院に応じることのできる病院、専門外の患者さんを迅速に紹介できる診療所、ケアマネ事業所、介護サービス事業所等との地域連携体制の構築への取り組みが不可欠であると考えられます。

(4)郡市医師会の取り組み
日本医師会は、郡市医師会および医師会員に取組方針を伝えていますが、地区ごとの温度差はかなり大きいように思われます。
国による在宅医療への診療報酬による誘導以前から、すでに熱心に取り組んでいるような医師がいる地域では在宅医療連携拠点事業を申請しています。また、郡市医師会内でも在宅医療部会はあっても、関係する一部の医師しか関心が高くない場合が多くなっているのではないでしょうか。郡市医師会として、地域で面展開できているところは少なく、在宅医療に熱心な医師がいる場合にせいぜい点で対応できているのが現状のように思われます。

◆診療報酬改定を受けての在宅医療のあり方

(1)国が示した地域包括ケアを担う主治医のあり方
平成二五年八月の社会保障制度改革国民会議の報告書で、「緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の普及」が提言されたのを受け、主治医のあるべき姿を示す「地域包括診療料」(月一五〇三点)と、「地域包括診療加算」(一回二〇点)の点数が新設されました。
対象の患者は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち二つ以上(疑いは除く)を有すること、診療所または許可病床が二〇〇床未満の病院で、他の医療機関とも連携のうえ、患者がかかっている医療機関をすべて把握し、処方されている医薬品をすべて管理し、健康管理や介護保険にも関与するなど継続的かつ全人的な医療を行うこととされています。在宅医療への取り組みについては、在宅医療を行う旨の院内掲示をし、当該患者に対して二四時間の対応をしていることなどが施設基準で定められています。
全部の要件を満たすのは現行の医療機関では非常に厳しいため、算定できる施設は限定的になったようです。

(2)実績や質の向上が求められる在宅医療
今回の改定では緊急往診件数や看取りの件数などの実績の有無を重視し、機能強化型在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の実績要件を、緊急往診件数を年五件以上から年一〇件以上に、看取り件数を年二件以上から、四件以上に引き上げました。また、複数の医療機関が連携することで機能強化型の基準を満たす「連携型」についても、各医療機関に緊急往診件数を年四件以上、看取り件数を年二件以上の実績を課すことにしました。機能強化型でありながら、他の医療機関に依拠して自らは実績のない医療機関が恩恵を受けることを排除しました。一方で、実績のある在支診・在支病については在宅療養実績加算を新設することで、機能強化型に準じた報酬を受けられるようにしています。
さらに、在宅医療を行うに当たり、緊急時における後方病床の確保が重要であることから、二〇〇床以上の病院に対して在宅療養後方支援病院の点数を新設し評価しています。